2006.3/24
津新町における仰天トンカツ定食
ところ変われば品変わる。 私としてはずいぶん馴染みのない食べ物に遭遇しました。 たかがトンカツじゃないかと言うなかれ。 どんなものだったか?
普通のトンカツについてある程度共通の認識が必要だと思うので、まずは 「普通みかける、ありふれたトンカツ定食」 をイメージしてみます。
◆普通のトンカツ定食
大きめの皿にメインのトンカツが盛り付けられています。 豚肉のカツレツがトンカツですから、一番ありふれたものとしてそれなりの厚みのあるロースの肉にパン粉の衣がついてきつね色に揚げてある。
和食として箸で食べるのですから、普通は揚げたトンカツを食べやすい大きさに切って、お皿の中央にどんと盛られます。
これに負けない分量で線キャベツの山がついていて、きゅうりの薄切りやトマトの切れっぱしがくっついていることも多い。 そして半円形のレモンが添えられ、黄色い辛子とがお皿の脇になすりつけてある。
こんな感じでしょうか。 キャベツにドレッシングがかかっている場合もある。 定食ですからこれにご飯と味噌汁か豚汁。 漬物かつくくらいでしょうかねえ。 ほぼ日本中の大方のイメージに近いと私は考えます。
これを踏まえて、私が遭遇した異様なトンカツ定食を対比させてみます。
◇津新町における仰天トンカツ定食
メインのお皿は楕円形ながらサイズ的には普通のトンカツが乗るに適当なものだったのです。 トンカツ本体が異様。 まずパン粉が使われていない。 クリーム色のぱりぱりした衣なのです。 豚肉のてんぷらといえばほぼ当たっています。
やや気になるのがその形。 とても細長いのです。 幅は3センチくらいで長さが25センチくらいあるはずです。 揚げ上がりの状態では楕円のお皿でもはみだしてしまうからでしょう、食べやすいサイズに切ったのち、二列に並べて盛り付けてあります。
したがって、盛り付けた様子は結構場所をとっている。 線キャベツの上に半分は乗っかるかたちになっています。 普通のトンカツでも一部分はキャベツに重なる置き方になりますが、この場合は二列目が完全にキャベツを覆うかたちです。 見た目にはけっこう景気のよいイメージです。 そのトンカツに最初からソースがかかっている。 真っ黒くてすこしとろみのあるソースでした。
普通ソースはお客があとから好みでかけるか、小皿に自家製のソ−スを用意して、そいつにトンカツをつけて食べるかたちなのでしょう。 最初からかかっているのははじめてでした。
キャベツのきざみ方は少し太め。 素人っぽい、素朴な線キャベツでした。 分量は普通と同じですね。 以上は見た目です。 次に、食べて気づいたこと。
先ず肉がおそろしく薄い。 カツサンドにはさまっているトンカツより薄いことは確かで、もう少しグレードの落ちるハムカツサンドのハムと同じくらいといえば的確でしょう。 しかし、口の中で噛んでみると豚肉の味はしますし、脂もあります。
どこからそういう風味が出てくるのか不思議な気分になりました。 ぱりぱりした衣の食感も悪くはありません。 料理としてはまずまずの出来といっていいと私には思えました。 しかし、これをもってトンカツと称することには抵抗がありました。
やや脱線しますが、以前定食屋の日替わりメニューでビーフカツというのを食べたことがあります。 トンカツのなかみが牛肉ってやつです。 こいつにデミグラスふうのソースがかかって出てきたのですが、このビーフカツに匹敵するインパクトが仰天トンカツにはありました。
定食についてきた豚汁にも仰天。 豚肉のかけらも入っていないのです。 これはたまたま入らなかったのかホントの手抜きなのか不明です。 しかし、味は紛れもなく豚のダシがでていました。 具はキャベツとねぎと大きな油揚げ。 油揚げはあとから投入したらしく、浮いていました。
そういう内容の豚汁が赤だし仕立てなのです。 名古屋名物の味噌カツでも赤だしが出ますから、そのこと自体には驚きませんが、豚汁が赤だし仕立てというのはこれが初めてでした。 分量は申し分なし。
出張先でたまたま入ったお店なので、常連さんの評判などは知るよしもありません。 こういうトンカツをもって普通と思われている地方でもあるのであしょうか。 少し興味がわいてきました。
北陸のどこかで食べたソースカツどんや、甲府名物のカツどん(ご飯にトンカツとキャベツなどが乗っていて、ソースをかけて食べるカツどんで、卵でとじたやつを煮カツどんといって区別している)など、個性的な食べ物が各地にあります。 今般出会った仰天トンカツもそうしたもののひとつなのかもしれません。
仰天トンカツなどと無礼な言い方をしましたが、この食べ物の氏素性が判明するまでは、私のなかのインパクトであるうちはそのように呼ばせていただこうと思っています。
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